私達の年金を食い尽くした自民党政権
2009年8月3日
宇佐美 保
私は、葉千栄氏(東海大学教授)がキャスターの朝日ニュースター「ニュースの深層」(2009年7月31日)の放送を見て、吃驚しました。
それは、ゲストの山崎養世氏(シンクタンク代表であり、民主党の高速道路無料化の提案者)の次の発言にです。
年金に夢が無い。 何故、こんなにも年金資産が増えないのか? 年金は、昔は、年率5.5%で回して(運用して)上げますという制度。 このごろは3%台で回すといっている国営の金融事業です。 (葉氏:昨年だけで投資で9.2兆円の損を出している) |
この件に関しては、拙文《インチキ評論家が年金は黒字と嘘を言う》もご参照下さい。
そこで、私が計算した結果では、「年率5.5%」で運用されていれば、次の世代の負担(世代間扶養)に頼らなくても、私達が払い込んだお金に利子が十分につき、私達の年金を私達の払い込んだお金で受け取れるのです。 |
これが、本来の年金制度の出発点であった筈です!
日本が超低金利にスタートしたのはほぼ20年前、ずうっと日本の年金資金の3分の2は国債に入って行く、今150兆円ある3分の2(山崎氏はこの時、4分の3といわれました)以上は、1.3%か1.5%、約束は5.5%とか3.2%とか言うことは、この逆ザヤが毎年、2とか3ある。 毎年、2兆円3兆円と消費税を上げる分(2兆円)自動的に損することを最初から決めている。 このように、損することを決めておきながら、消費税を上げる。 中国、インドの株(上がり下がりはあるにしても)を20年前に買っていれば、数倍になっているのに、日本の年金資産には中国株、インド株は1株も入っていない。 最初から、大蔵省と、3分の2(4分の3)は日本国債を買うと決めている。 これこそ役人の間の決め事。(こんなこと国民は知っていますか!?) |
このように勝手に、
年金の3分の2も日本の国債を購入するなどとは、 山崎氏の“こんなこと国民は知っていますか!?”の お言葉通りに、私は全く知りませんでした。 |
私が知っていて、常々憤慨していたのは、日本の株が暴落する度に、「年金資金」で、株の買い支えをしていたことです。
(この点、だけでもとんでもない政権、政党だ!と自民党の政治家たちに怒りをぶつけていたのです)
なのに、「年金の3分の2も日本の国債を購入する」という事は、「年金資金」で、日本国債の買い支えもしていた事になります。
即ち、自民党政権は「年金資金」を食い潰す事で、延命し続けてきたのです。
(もう一点を付け加えさせてください。
低金利時代では、低利回りとはいえ国債の方が有利ですから、銀行は、国債を運用していれば支店なども不要となり銀行員を大幅に削減することが出来るメリットもありますから、いわば「人件費不要で、濡れ手で粟」の美味しい商売が可能となり、自民党政権は国債を銀行に押し付けることが容易となります)
そして、
「年金資金」といい「銀行預金」といい、 私達の大事なお金を、 自民党議員の方々は、 自分たちの政治生命維持の為に、無駄使いし続けてきたのです。 |
更に、山崎氏のお話を引用させて頂きます。
普通にやっていれば、6とか7%の運用は可能であった。 なのに、今に至るまで、この運用割合(3分の2を国債)を見直し、より良い運用を行おうとする事を、やっていない。 他の国と同じように平均6%(今1%、1.5%)で運用すれば(150兆の6%は)9兆円。 4%でも、6兆円の利益が上がります。 消費税率で言えば、3倍アップ分の効果。 一般の会社なら、利回り1%の債券を発行したら(売れての話でしょうが)、社長に“良くやった”と褒められましょうが、その債権を自社で買ったら“お前は馬鹿か!?”といわれるでしょうよ。 自民党政権(それにつながる役所)の、こんな馬鹿げた行為を、何故、民主党は非難し追及しないのでしょうか!? |
更に、山崎氏は次のようにも語っておられました。
年金問題に関しては、「記録のいい加減さ」の対策として、「通帳やカードを作る」とか言っているが、これを持ってゆく社会保険事務所は、全国で312箇所、年金加入者、30万人に1箇所の割合、秋田県なんか東京の3倍も面積があって4箇所しかない、どうやって行くのか!? これではとても相談に行けない。 従って、社会保険事務所はやめて、平均歩いて1キロのところにある郵便局(全国2万4500箇所)を活用すべし。 地域の郵便局で自分の年金の相談ができればよいし、その他にも役所の手続きなどもやればよい。 (1人当たり200円(全体で200億円)の費用で可能) 国民に便利なように郵便局を活用することと、運用を改善しない限り、年金問題は終わりません。 国民が一番信頼している郵便局、そして、高齢社会の年金インフラに(国民の財産である)郵便局を活用すべきです。 |
民主党が政権を奪取した際には、このような山崎氏の提言を活用して頂きたいものです。
(補足:1)
山崎養世氏の著作『日本「復活」の最終シナリオ:朝日新聞出版』での年金に関する記述は次のようでありました。
年金資金はアジアで運用せよ 日本が長寿社会になったことはすばらしいことですが、老後の備えとなる年金が心配です。 年金資金についても、中国やインドで運用することを早急に考えるべきでしょう。 国民が国に預けた年金保険料の一部は積み立でられて運用されています。その金額は一五〇兆円に上ります。二〇歳代で払い始めた国民の資金を、現役を引退するまで預かって運用するという超長期の運用事業です。 そのおよそ三分の二の約一〇〇兆円は国債で運用されていますが、長引く超低金利で大きな打撃を受けています。八〇年代までは五%程度の利回りが期待できたのですが、いまでは一%しか利回りがないからです。四%も利回りが下がったのですから、年間四兆円も収入が減っている計算になります。これでは、年間一二兆円程度の税収の消費税を二%くらい上げても足りないということになります。 国債以外に、日本株にも投資していますが、それよりも高い収益が期待されるのは外国債券と外国株式です。 しかし、二〇〇八年からの金融危機によってアメリカとヨーロッパの金利は急低下し、為替も円に対して大きく下落しました。株式についても欧米市場は大幅に下落しました。 日本の年金資金の運用は大きな曲がり角を迎えています。 そもそも、年金運用は一九世紀のスコットランドやイングランドで始まり、当時の新興成長国であるアメリカに投資して大成功したことから世界に広がりました。 成熟したお金持ちの国が、お金は足りないけれども若く成長していく国や企業に投資し運用することで、自国民の老後の資金を増やす、という共存共栄の関係が年金運用の理想なのです。 これから人口が減る日本は、まさに熟年のお金持ち国ですから、これから成長する国や企業に投資するのは自然なことでしょう。 ところが、日本の国の年金運用では、成長するアジアへの「鎖国」を続けています。外国の運用といっても、八〇年代までと同じように欧米しか対象にしていません。中国やインドが世界経済のメインプレーヤーでなかったころに作られたルールをいまも変更していないからです。 ルールといっても、国が年金運用の基準にしている外国債券や外国株式のインデックスが先進国(といっても八〇年代までの概念です)のみを対象にしている、という単純な話です。 そんな単純な理由で、中国やインドがまぎれもなく経済大国になっていても、投資対象になっていないのです。 近い将来、中国やインドが日本を抜き、四〇年後にはアメリカに彗経済大国になると多 くの専門家が予想しているのに、全く年金運用の対象にしていないというのは、怠慢としか言いようがありません。 これから欧米経済の低成長、低金利、為替下落が予想される中で、外国運用の資金を欧米にしか振り向けないのは危険でもあります。 いまこそ、相対的に高成長、高金利、強い為替が予想されるのに、大暴落してかつてよりはるかに安い中国やインドなどアジアヘ、日本の年金を「開国」すべきときなのです。 |
(補足:2)
先のテレビで、山崎氏は次のようにも発言されておられました。
20年前は株価は4万円だったのが、今は1万円、またGDPはまったく伸びていない。日本が持っている対外純資産(250兆円)であり、過去10年間で100兆円増えている。 なのにGDPは伸びていない、国としてお金持ちになっているはずなのに、国内総生産とか 国民の所得がなぜ増えない? |
この件は、拙文《資本主義崩壊の首謀者達(輸出企業の背信)》もご参照ください。